青い小径

第24回朝日作曲賞 受賞作品

混声合唱組曲

青い小径

Blue Path
for mixed chorus and piano

詩 竹久 夢二

Words by Yumeji Takehisa

曲 森田 花央里

Music by Kaori Morita

- 人は一度この小径をゆけば、もはや再び帰らないだらう。 -
詩集「青い小径」の冒頭に夢二はこう書いています。
彼の言葉は、あたたかいのにつめたくて、やさしいのにかなしくて、諦めているのに願い続けている。
そして少し残酷です。それは彼が残酷な性質というより、この世のあるところは確かに残酷であり、彼はその真実を語りたいのだと思う。
彼の描いた女性たちは、よそ行きに着飾った婦人ではなく、芸者や肺病やみのような女。それは日常の中の貧しくやさしい人々でした。
美しい女ではなく、当時、犠牲的に生きる人々の願いを描きたかったのです。
彼は、ここにはない自由と幸福の世界を一途に望み、失われしもの、過ぎ去りしものに思いを馳せ、痛むほど純粋な郷愁を抱いていました。
懐かしく儚い詩は、残酷な痛みを秘めています。
花火の下でお酒を飲みながら、浴衣の男女は刹那的に笑う。だから愉しまなければと、心の真実に目を反らしたりして。
夢二は来ぬ人を待ち続け、心の願いのままに生きようとしました。
ほんとうに誰かをそばに置くことなど、誰にもできません。
銀の小籠があるとするならば、それは心の中に。
青い小径の向こうで、再び帰らぬ、幼き日のあなたと会えますように。
2014年8月 森田 花央里

2014年度
全日本合唱コンクール課題曲G4「鐘」

男声版 は こちら

鳴らない鐘の
 あることを
知らずにゐた日が
しあはせか

知つたこの日が
 しあはせか
引けども
鳴らぬ鐘ならば
いつそ
引かずに
おいたもの。

紺青のほのめく空に
つい/\と花火はのぼる
いさぎよくちるや
らんぎく
やなぎ からまつ
かぎや たまや
うつくしきものは
なべてはかなし
水のほとりのかはたれに
柳をひきて
ひとの嘆かふ。

指をむすびて
「マリアさま
ゆめ/\
うそはいひませぬ」
おさなききみは
かくいひて
涙うかべぬ
しみ/゛\と
雨は
ふたりのうへにふる
また
スノウドロツプの
花片に。

あなたの心は
鳥のやう
涯のしれない
青空を
ゆきてかへらぬ
鳥ならば
私の傍へ
おくために
銀の小籠に
入れませう。

合唱団 やえ山組 再演

指揮 岩本 達明
ピアノ 森田 花央里

1.鐘

2. 花火

3.ゆびきり

4. あなたの心