春の手

春の手

Hands of Spring
for mixed chorus and piano

詩 竹久 夢二

Words by Yumeji Takehisa

曲 森田 花央里

Music by Kaori Morita

premiere

Spring Seminar 2016
~新作合唱曲による公開講座~

harmonia ensemble
指揮 : 福永一博
ピアノ : 前田勝則

「あの人」はどこにいるのだろう。
この曲を歌ってくれる人がいるならば、私がいちばんしてはいけないことは「あの人は必ず来る」と言ってしまうことだ。
「あの人」は地球の何処かには生きていると思うけれど、すべての人生に与えられるとは限らないし、奇跡のような確率で出逢うことができたとしても、共に生きられるかどうかとは関係がない。生きていることに「絶対」は無いからだ。夢二だってそう思っている。彼は人生を信じていない。「あの人」は来ないかもしれないけれど、夢二はそれでも最後まで待っていたと思う。
春は、夢二にとって幸福の象徴で、彼は五月をとりわけ愛していた。
これは、彼からの gift だ。
「あの人は、きっと来る」と思う。これは夢二とあなたへの、私からの gift だ。
目を閉じると、「あの人はここにいる」と思うことができた。
2016年3月 森田 花央里

どつかで あたしを呼んでゐる
たれかが あたしを待つてゐる。
ずつと遠くだ。すぐそこだ。

あたしは小窓を あけて見た。
あたしはそつと手を出した。
おもたい やさしい なやましい。

あの人の手だ。
春の手だ。