鐘
The Bells
for voice and piano
詩 竹久 夢二
Words by Yumeji Takehisa
曲 森田 花央里
Music by Kaori Morita
「鐘」という曲を歌う人たちは、私の前に何度も現れた。忘れられない。彼らは曲に込められた何かに気づいていた。人は、分かり合えなくて。だから、この曲を書いたのに。
それでも曲に書いた通り、「この世界は残酷」で、この歌を書かせてくれたその人が歌う姿は、その theory を証明してしまっていた。それすらも残酷な出来事だった。私はこんなことを望んでいない。
こんな歌を歌わなくていいから、幸せになってほしいと思った。
たぶん、幸せになるべき人だから。
それでも、歌うことによって、少なくとも死から遠ざかり生に向かっていて、その人は「銀の小籠」のようなものに「鐘」という曲を入れておきたかったはずなのに、「多くの人に歌われるべき曲なので」と言ってくれた。
私は胸が塞がれた。
この曲は私だけのもので、書いた時、私は孤独なひとりの人間だった。
あれから八年が経って、私は作曲家になったと思う。
2021年5月 森田 花央里
Premiere
委嘱 里 建一郎
2021年5月30日
大和市文化創造拠点 シリウス
浅野 深雪 音楽教室
みゆき音楽アトリエ 発表会
歌 里 建一郎
ピアノ 市川 直子
鳴らない鐘の
あることを
知らずにゐた日が
しあはせか
知つたこの日が
しあはせか
引けども
鳴らぬ鐘ならば
いつそ
引かずに
おいたもの。