慶應義塾 ワグネル・ソサィエティー 男声合唱団
委嘱作品
男声合唱組曲
青い小径
Blue Path
for male chorus and piano
詩 竹久 夢二
Words by Yumeji Takehisa
曲 森田 花央里
Music by Kaori Morita
premiere
2019年6月22日
すみだトリフォニーホール 大ホール
指揮 雨森 文也
ピアノ 平林 知子
慶應義塾ワグネル・ソサィエティー男声合唱団
この曲は私だけのものだった。私のために書いた。
窓を開けて、空だけがつながっているように思った。
どうしてこんなに分かり合えないんだろうと。
人は他者の望むように生きられない。
知ったこの日も、知らずにゐた日も、幸せではないのだ。
私はこの曲から希望を奪った。
音楽はこの世と同じだから。
軽率な希望は人を傷つける。
歌う人々が現れて、不思議な気持ちだった。
ほんとうに美しい姿で歌っていたから。
心優しい人々との出会いをくれた。
優しくてあたたかな、きっと傷ついた人たち。心から大切に思う。
「書いて欲しい」と説得してくれた若者たちがいなければ、この曲が生まれることはありませんでした。例えば「鐘」という曲が、彼らの高校時代や青春に何かを残してきたのだとしたら、心から幸せに思います。若者たちの未来に多くの希望があることを願っています。
2019年11月 森田 花央里
再演
慶應義塾ワグネル・ソサイエティー男声合唱団
指揮 山内 祥平
ピアノ 森田 花央里
鳴らない鐘の
あることを
知らずにゐた日が
しあはせか
知つたこの日が
しあはせか
引けども
鳴らぬ鐘ならば
いつそ
引かずに
おいたもの。
紺青のほのめく空に
つい/\と花火はのぼる
いさぎよくちるや
らんぎく
やなぎ からまつ
かぎや たまや
うつくしきものは
なべてはかなし
水のほとりのかはたれに
柳をひきて
ひとの嘆かふ。
指をむすびて
「マリアさま
ゆめ/\
うそはいひませぬ」
おさなききみは
かくいひて
涙うかべぬ
しみ/゛\と
雨は
ふたりのうへにふる
また
スノウドロツプの
花片に。
あなたの心は
鳥のやう
涯のしれない
青空を
ゆきてかへらぬ
鳥ならば
私の傍へ
おくために
銀の小籠に
入れませう。